作家ランク 艶
ペンネーム あまねゆり
受注状況
作品内容 男性向け 女性向け
得意ジャンル
美少女 ボーイズラブ 純愛 ほのぼの ファンタジー 社会人 歴史物
コメント
ご注文に沿ったものをご提供できるよう、努力していきたいと思います。
この作家でオーダーする
【サンプル1】

Puppet manipulator's king

 地方都市のさらに郊外に、七宝の本家はある。
 広大な敷地に、お屋敷自体も広く随分と時代を経た荘厳な雰囲気を醸し出している。
 そのお屋敷に久崎茜(くざきあかね)が、メイドとしてきたのは15の時だ。
 以来、5年間ずっと屋敷のメイドとして仕えてきている。
 その間に、五人のメイドがやめていき、去年には長年勤めていた執事も解雇された。
 望んで出て行った者もあれば、解雇を言い渡された者もいる。
 みなにそれぞれの事情があり、そしてこのお屋敷にも事情があった。
 それでも茜はこのお屋敷に、当主である七宝葛篭(しちほうつづら)に仕え続ける。
 これはもう決めたことで、この先も揺るぎようの無いことなのだ。



「あーかーねっっ!」
 弾むような声と同時に背後から抱きつかれる。
 喉元まで出かかった悲鳴をかみ殺し、なんとか声を漏らさずにすんだ。
 一呼吸おいて、ゆっくりと背後から回った腕をほどきつつ、振り返る。
「…葛篭様、何か御用でしょうか?」
 冷静な声を作って言うと、背後から抱きついてきた青年が子供っぽい表情で不満そうに呟く。
「茜、少しくらい驚いても良いんじゃない?」
「そういつも驚いてばかりもいられません」
「つまんないな。最近はちょっと表情が出てきて面白かったのに」
 葛篭は茜が無表情だという。
 感情を表に出さないのは仕事柄もあるが、それにしても反応が薄すぎると言って、この年若い主人は何かと茜にかまって仕事の邪魔をする。以前にもじゃれ付いてくることはあったが、最近は痴漢行為すれすれのものだというのが、目下の茜の頭痛の種だ。
 しかしそんな悩みをおくびにも出さずに、茜は無表情に言う。
「普通に話しかけていただけると大変助かります」
「冷たいな」
 腕を解こうとする茜の手と、なんとかもう一度抱きしめようとする葛篭の腕が絡み、結局、茜が距離をとることに成功した。
 心底不満そうな顔をして、葛篭は腕を組んだ。それなりに整った顔をしている葛篭だが、そういう表情をすると、子供っぽさが滲み、当主としての威厳は皆無になるので、茜はあまり好ましく思っていなかった。
 だが当の本人は、気にした様子もない。
 それもまた頭の痛い問題だったが、それはとりあえず置いておいて茜は主人を促した。
「ご用件をどうぞ、ご主人様」
 淡々とした口調にかなり憮然となりながらも、葛篭はため息をついて用件を答えた。
「ちょっと下の工房にこもるけど、何かあったらドアの前で呼んで。ドアは開けないでね」
「畏まりました」
 そういって身体を引くと頭を下げる。
 部屋に戻っていく葛篭の気配が遠のいたと思い、茜も顔あげて背中を向けた。
 瞬間、背筋にぞっとしたものが走った。
 身構えたが遅かった。
「…っ!」
 危うく声が出そうになるのをかみ殺し、踏みとどまる。いつの間にか、背後から伸びた手が茜の胸をわしづかみにしている。
 持ち上げるようにしていやらしく指が動き、柔らかな肉に食い込むのに、茜はとっさに言葉が出なかった。
 ショックと、胸に与えられる甘い刺激に膝から力が抜けそうになる。
「…あー柔らかい。十日ぶり」
 しみじみと背後から呟く声が聞こえて、慌てて振り払う。
「葛篭様…っ」
「だって茜なかなか触らせてくれないから。この前だって二回しかさせてくれないし」
「だからといって、いきなり人の胸をわしづかみにするのはやめてください!」
「許可とればいいの?」
 とっさに胸を隠すように腕を組んだ茜に対して、平然と問う。絶対無邪気を装ったわざとだと解りきっていたが、茜は疲労感に似たものを感じながら生真面目に答えた。
「…私は、葛篭様のメイドです」
「知ってるよ」
「ですから、勤務時間内にこういうことをされるのは困ります…が」
「が?」
「…時と場合により、やぶさかではありません」
 苦い思いで呟く。
 これはすさまじいジレンマなのだが、今はそうとしか答えられない。
 茜の葛藤をよそに、葛篭はじっと視線を合わせたまま、畳み掛けてくる。
「仕事終わった後ならいいってことだね。わかった。じゃあ、夜に」
 あまりにもざっくりとした解釈に、茜の方が慌てた。
「は…」
「約束したよ。今晩はちゃんと部屋に来てね。そうじゃなかったら、茜の部屋に襲いに行くよ」
「葛篭様、それは…」
「じゃあね」
 背中を向けたまま、ひらひらと手を振りながら行ってしまう。
 聞く耳も持たずに去っていった主人に、茜はしばし言葉も出なかったが、やがてため息をついて頭の中を切り替えた。
 どうせこれから工房に入るのなら、作業に没頭して夜までに出てこないかもしれない。
 葛篭は表向き成人すれば莫大な財産を受け取る予定の大学生だが、彼は学生の身でありながら祖父の研究の成果を継承していた。
 研究と言えば聞こえはいいが、彼のしている研究は、少し世間一般の人に理解されにくい。
 『魔術』
 詳しくは知らされていないし、また理解もできないが、それが彼の研究テーマであり、彼はすでにいくつかの奇蹟を行使することができる、らしい。
 彼の研究の奇蹟については、あまり見たことがないが、彼の研究の世界を垣間見たことはあった。研究成果を狙う『何か』に襲われたことがあったのだ。
 少なくとも動物園でもお目にかかれないだろうソレは、頭に角が生え、蝙蝠のような羽の生えた真っ黒な『何か』だった。
 ともかく茜の仕えるご主人さまであるところの葛篭は『人形師』と呼ばれる魔術師で、今の科学では説明できないことができるということ。
 そして葛篭はしばし研究に耽溺するあまり、寝食を忘れるという困ったところがあるのだ。
 寝食を忘れられるのは困ったことだが、茜にちょっかいを出したことも忘れて、ついでにさっきした約束もどうせ忘れてしまうだろう。
 茜はそう考えることにして、仕事に戻った。



 葛篭が工房に入ると言付けに来たのが、昼過ぎ。
 すでに今は夕食の時間だ。
 部屋に行ったが、やはり姿はなかった。
 工房に入ってしまえば集中力の権化の葛篭には、何を言っても無駄だし、茜は基本的に入れないことになっている。
 食事を抜くようなことは正直して欲しくないが、こればっかりはしょうがない。
 しかし、あきらめずに茜は時間を忘れてなにやら怪しげな錬金術やら、魔術やらに淫する主人に声をかけるべく、半地下に降りた。
 天井に少しだけ窓があるような薄暗い部屋だ。
 茜は扉の前に立ち、胸の中で復唱する。
 扉を開けなければ、呼ぶのは大丈夫。
 ドアを軽くノックして、声をかける。
「葛篭様。お夕食の用意ができました。葛篭様?」
 もう一度ノック。
 しかし返事は無い。
 大方の予想通りに、どうやら作業に集中しているようだ。
 きびすを返そうとしたときに、茜はふと何かの匂いが鼻についた。
 妙な、薬の匂い。
 工房ではそれはそう珍しいことではないが、その日は何か違った。
 もう一度振り返ると、ドアの隙間から微かに紫煙がたなびくのが見えた。
「…!?」
 飛びつくようにしてドアにすがると、もう一度強めにドアを叩く。
「葛篭様…?葛篭様!?」
 まさか、実験中に火が?
 葛篭様は中で倒れている…!?
 迷っている暇は、一秒も無かった。
 ドアノブに手をかけて、思い切り開く。
 鍵のかかっていなかったドアは、勢いよく開いた。
「ぅ…!」
 視界があっというまにホワイトアウト。
 刺激臭が鼻をつき、ぐらりと視界がぶれた。
 脳天を掴まれて振り回されるような感覚。
「…な、…これ、つづら、さま…?」
 眩暈を感じながら、茜は必死に煙の向こうを見ようとして、膝を突いた。
「茜!?」
 遠くなっていく意識の中で、葛篭の声が響いた。
真横になった視界には、工房のさらに奥の部屋に続く扉から、厳重に実験用のゴーグルをかけ、マスクをした葛篭の姿が微かに見えた。



「だから、開けないでって言っておいたのに」
 意識を取り戻した茜に開口一番、葛篭は言うと乱暴に茜の額に濡れたタオルを置いた。
「…申し訳、ありません」
 茜の世界はまだ不安定にぐらついていたが、なんとか答えた。
「何をやるのか教えてなかった、オレも悪かったけどさ」
 やっぱりあの工房が半地下っていうのもよくないのかなぁ、と独り言のように呟くと立ち上がった。長い前髪をかきあげ、ため息をつく。
 そしてベッドサイドに手をついて、茜をのぞきこむ。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
 眩暈も徐々に治まってきた。
 なんだか身体がだるい感じはするが、別に起き上がるのに支障はなさそうだ。
 徐々に余裕が出てきたので周囲を見回すと、葛篭は自分のベッドに茜を運んでいた。
 いつまでも葛篭のベッドを占領しているわけには行かない。
 腹に力をいれて起き上がると、まだ微かに眩暈がした。
 自分ではまっすぐ起き上がったつもりだったのだが、かしいでいたらしい。慌てて出した葛篭の腕の中に納まってしまう。
「まだ寝てなよ」
「そうは参りません。お食事の用意も…」
「いいよ、それよりも、茜はもう少し休んだほうがいい」
 ぎゅっと抱き寄せられるようにして、耳元に葛篭の声が響いた。それになぜか再び眩暈を覚える。
 いや、眩暈とは違う。
 でも身体から力が抜けていく。
 ぞくぞくと身の内に宿る何かが、首をもたげる。
「茜?」
「なんでもないです」
「でも、呼吸が浅いし、顔がちょっと赤…」
「へ、平気です!」
 上ずった声で言い、顔をあげると葛篭と視線が合う。
 心音が体中に響いた。
 血液が通常の倍の量、ものすごい速さで流れているような錯覚。
 目を丸くした、葛篭の手が動いた。
 くすぐるように耳朶に触れる。
「ひゃ…っあ、や…やめてください!」
 身をよじる茜の様子を見下ろす葛篭の目は、心配の色から別のものに変わる。
 ぞっとした。
 研究者、あるいは魔術師としてのそれ。
「ふーん」
 茜の柔らかな身体を離さずに、小さく呟く。
 視線の先に茜ではなく、別のものを見ているような顔。
「…な、んですか?」
「茜は極端に、あの手の薬物に弱いみたいだね。どれが当たったのかな」
 意味の解らない言葉に、茜が眉根を寄せる。
 指折り数えながら、…の卵巣、精巣、マンドラゴラ、カエルの毒素、ぶつぶつと呟く。耳慣れないために、聞き取れなかった単語もあったが、確実に条例だったり、法律だったりに触れそうな、不穏なものまで聞こえてきていた気がする。
 だが、今はそれどころじゃなかった。
 浅い呼吸を繰り返しながら、身体が熱くなってくるのを感じて自分を抱きしめる。
 葛篭は口元に手を当て、ぽつりと呟いた。
「あの段階だと、まだ精製途中だから、本来の目的のものとは違うものになってたかもな…」
「…は?」
「もしかしたら、茜の吸った煙には、媚薬に近い効果があったかもしれない」
 今度こそ、心底ぎょっとした。
「つづら、さま?」
「そうか、うかつだったな」
「つづらさま、あの…」
 いつのまにか舌が回らなくなってきていたが、必死にしゃべろうとした茜の言葉を、葛篭はさえぎるように口を開く。
「身体に害もない。後遺症もないから、大丈夫だと思う。あとは、今どうするか、だけど」
 そういって真剣な、何かを検証するような魔術師の顔のまま、こともなげに葛篭はいった。
「どうせ、今夜するはずだったもんね」
 にっこりと笑った。
 その腕は容赦なく茜の体を組み敷いた。



「いやぁ…、葛篭様もう、許して…っ」
 四つんばいに這いながら、茜は絶頂の悲鳴をあげた。
 淫核を数度、指の腹で撫でられ、軽くつままれただけだったのに、秘所からは大量の愛液があふれ、太ももまで伝い濡らした。
 膝に力が入らなくなり、がくりと身体が崩れたが、茜の身体の奥の熱はまだ消えない。
 自分の感じやすい部分が、もどかしく疼いている。
 乳首も、手首の裏も、首筋も、秘裂の奥も、身体中全部がまだ足りないといっているように熱い。
 こんなに、何度もイッているのに。
 ベッドがきしむのに視線を上げると、自分のことをのぞきこむ葛篭と目が合った。
「三回目」
 濡れた指を舐めながら、葛篭が楽しげに呟く。それが、絶頂を迎えた回数だとわかって、また頬が熱くなり、恨めしい気持ちで、シーツに顔を押し付けた。
 わかっている。
 葛篭のせいじゃないことは。
 純粋な事故だった、非を考えるなら、言いつけを守らなかった茜にあると考えてもいい。
 それでもこの状況は茜にはつらすぎた。
 乳首を軽くかまれただけで、秘所に指を差し入れられただけで淫らにもだえ、絶頂を迎えてしまうのだ。
 たすけて。
 心の中で何度も呟くが、無論誰にもどうにもできないことは、わかっている。
 しいて言うなら、葛篭にこうしてしてもらうことが、薬が抜けるまでの、唯一の対応策なのかもしれない。
 でも普通に抱かれるより快楽が強く、何十倍もつらい。
 無意識のうちに涙が伝い、食いしばった唇から嗚咽が漏れる。
「茜?」
「…ふぅ…え、うぇ…」
 みっともなく泣くのはイヤだったが、どうしても涙が止まらない。それまで嬉々としていた葛篭が、表情が曇る。
「茜、あかね…そんなにつらい?」
 まともに声が出ないので、首を横に振った。
「大丈夫?」
 肩にキスを繰り返しながら、呟くたびに肌に吐息が触れる。
 茜は身体を震わせながら、身体をひねり仰向けになった。
「っ…づらさま…」
「オレも実際には、こんなの初めてだから、薬が切れるのを待つしかできない。でもその代わり、茜のして欲しいことなんでもするから」
 逆光で照らされた、真剣な表情の葛篭を見上げて、茜は浅い呼吸を繰り返しながら、喉をならした。
 心臓の音が、うるさいほどに響く。
 息苦しいくなるくらいに敏感な身体は、自分ではどうにもできない。
 葛篭に助けて欲しい。
「もっと、してください」
 答えるようにキスをされ、腰を抱え上げられる。
 いつもなら、恥ずかしくて抵抗するほど足を広げられても、されるがままになっていた。
 そんな体力も残っていなかったし、そうされることが気持ちよかった。
 媚薬の効果なのかもしれない。
 つながっている部分がはっきり見える体位も、拒もうとは思わない。
「ぁ、アん…ン」
 襞に葛篭の熱を感じて、それだけで声が漏れてしまう。
 濡れた部分をなぞるように、場所を探るような動きにいちいち腰が動いてしまう。
 欲しくてたまらない。
 貫かれた瞬間、絶頂を向かえてしまい、中をかき回されてまた声をあげた。
「膣内…きっつい…のに、ぬるぬるして、手でされているみたい…、っ…ぅあ…っ」
「いや、いや、あ、あ、アぁ、あは…っ、また、イちゃぅ…!」
 何度も突き上げられ、中を擦りたてられ、快楽で頭がおかしくなりそうだった。
「あかね」
 気が遠くなりそうになった時に、耳朶に直接囁かれながら、途中で引き起こされた。
 葛篭の身体をまたぐようにして起きた途端に、自重でより深くつながる。あふれ続ける愛液で滑り、どんどんつながりが深くなり、無意識に逃げるように腰を浮かせた。
「腰使ってる、茜」
「きゃ…ひ、ァ…ん、くうぅん」
「かわいい声出しちゃって…、ココも絡みついて、うねってるし」
「あ…ゃ、やだ、言わないで、くださ…、あ、アぁ…」
 唇をきつく結んでも、声がもれてしまう。
 どこかはなれたところで見ているような、冷静な自分が頭の隅にいて、その貪欲で浅ましい姿に死にたくなったが、身体は勝手に動いていた。
 以前、葛篭にねだられても断固として断った格好だというのに、今は抵抗する気も起きずに、逆に自分から動いていた。
 葛篭に下から胸をめちゃくちゃ揉みしだかれながら、腰を振りたてる。
「…やだ…、つづらさま…、や…なの…ぉ」
「んー…でも、茜、すっごく気持ち良さそうだけど」
 苦笑いしながら意地悪く言われて、茜はきつく眼を閉じた。首を必死で横に振ったが、乳首をつねられて、背中がそりかえる。
 我慢できない。
「やぁ…、ぃい…、いいの」
「気持ちいいのに、いや?感じちゃうのが恥ずかしくて、イヤなの?」
 茜は、もう訳も分からず、ただ葛篭の言葉にうなずいた。
「恥ずかしくなるくらい感じてるんだ。これ、すごく…イイんだ…っ」
「あ、や、やあ、ソコこすり付けるの…また、キちゃう…だめ、ダメ…強い…あ、やぁ…んん…っ!」
 音がするほど腰を突きあげられ、びくびくと震えながら、身体が反り返る。
 葛篭の低く苦しげなうめき声が聞こえて、腰を強くひきつけられた瞬間に身体の中に熱が広がる。
「ぁ、あ、出て…る」
 なかなか止まらない射精に足に力を入れると、つながりから濡れた音が響いて、溢れだした。
 こぼれるほど注ぎ込まれて、それが気持ちよくてまた膣内が震える。
 痙攣が止まらないまま、身体に力が入らず、葛篭に折り重なるように倒れた。
 あごをとられて、めちゃくちゃにキスをされる。
 上も下もふさがれて、何も考えられない。
「なんか…吸い尽くされそう」
 荒い行きの合間に、ため息のように言われて茜は泣きそうになる。
「ごめんなさ…」
「いや、オレはすげー満足だけど」
 舌を伸ばして下唇を舐められて、唇を開く。
「まだ、つらい?」
 聞かれて、自分の身体を意識してみる。まだ葛篭を受け入れたままで、悦楽の余韻はあるものの、さっきまでの狂ったような飢餓感がはない。
「つらくは、…ないです」
 呟くと、葛篭はまじまじと茜の顔を見た後に、口元を緩めた。
「茜、かわいい」
「…は…?」
「めちゃくちゃかわいい。大好き」
 そういって、抱き寄せて所かまわず、唇で触れる。顔中むやみにキスをされた茜は、
「ちょ…つづらさま…んっ」
「ちゃんと責任取るから、安心して良いよ」
「あの…あの、え?…もう、いい…、あ、やだ、また大きく…、ちょ…葛篭さま、待ってください、一度抜いて…」
「ダメ。今度は俺の番」
「ええ!? …待っ…あん…やぁぁん、また…そんなにしたら…」
 腰を抱えられ、下から突き上げられるのに、最早抵抗する気力も体力もなく、茜は再び葛篭の上で啼かされ続けた。



 葛篭が昼近くに起きた頃には、当然のように茜の姿はなかった。
 こういうとき、葛篭は心底感心する。
『使用人は主人と同じベッドで寝ないもの』は、茜の中で鉄の掟なのだろう。
「おはようございます」
 葛篭の様子を見に、部屋に訪れた茜はまるで昨日の面影すらない。
 いまだ情事の余韻の中にいる葛篭とは、大違いだ。
「…おはよ」
 とりあえずそう呟いて起き上がると、ガウンを背中からかけられた。
「お昼はどうなさいますか?」
「食べる。…茜、元気そうだね」
 常にない乱れっぷりを披露した後だというのに、あくまで無表情を通す、生真面目なメイド然とした態度が癪に障って言ってやると、茜は一呼吸の間の後に
「おかげさまで」と平然と答え、スタスタと室内に入り
「昨日、お召しになったものをお預かりしていきます」と、脱ぎ散らかしたパジャマやシャツを拾って手に取った。
 そして、
「シーツは、あとで換えに参ります」
 そういって一糸の乱れぬ完璧な礼をして、出て行った。
 葛篭はベッドに胡坐をかいて、それを見送りながら小さく舌打ちしてから、邪魔な前髪をかきあげた。



 葛篭の部屋を出た途端、洗濯物をきつく抱きしめながら、茜は足早になった。
 耳まで赤くした顔を上げることもできずに、うつむいたまま小走りにリネン室に向かう。
 いままで我慢していた分とでも言うような上気しきった顔は、昨夜の情事の余韻が十分すぎるほど残っていた



【サンプル2】



【サンプル3】

閉じる