作家ランク 極
ペンネーム HEXA
受注状況 ×
作品内容 男性向け 女性向け
得意ジャンル
美少女 ロリ コメディ 純愛 人妻/熟女 制服 ハードプレイ 触手 コスプレ ファンタジー
コメント
ゲームを中心にお仕事をいただいております、HEXAと申します。
男性向けでしたら、ほぼNGなしで、あらゆるジャンルについて執筆させていただきます。
また、女性向けに関しましても、一度ご相談いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

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【サンプル1】

 王子たるもの、頭が弱くてはつとまらない。
 少なくとも頭が弱く見えるようではまずい。さらに言えば、外見は賢そうでも口を開いた途端にバカがばれるようでもいけない。

 そういうわけで、王子であるアリョーシャには家庭教師がいた。
 家庭教師はソフィーヤと言って、若干十八歳にして大学を卒業している、大層な英才だ。なんの専門で卒業したのか一度たずねたが、王子には理解できない難解な説明をされたので、未だに謎である。
 アリョーシャも、頭がよいとは言えないにしても、悪くはないほうだ。その説明が理解できなかったのは、ひとえにソフィーヤに説明する気がなかったからに尽きる。
「わたしの専門などどうでもよろしい。基礎の教養すらおぼつかないというのに、そんなことを知ってどうするんですか?」
 このように、ソフィーヤは大抵冷たくそっけなかった。
 彼女が冷たいのには、どうやらプライドの問題が絡んでいるらしい。大学を主席で卒業し、宮廷に学者として仕官できたのに、待っていたのは王子の家庭教師の仕事だったからである。
 国の機関で最先端の研究に没頭することこそ、ふさわしいはずなのに――四つも年下の王子に、その辺の教師でじゅうぶん代替の利く勉強を教えているのだ。
 ソフィーヤの気持ちもわからないでもなかった。
 とはいえ、彼は王子である。少しぐらい敬意を持ってくれて、職務に誇りを感じるぐらいしてくれてもバチは当たらないではないか。アリョーシャは常々そう思っていたが、口に出すとなにを言い返されるかわかったものではないので、黙っていた。
 もしアリョーシャのデキさえよければ、ソフィーヤもそれなりにやりがいを持ってくれただろう。しかし、なんと言っても彼女の要求する『デキのよさ』とは、彼女と同等か、あるいはそれより少し劣ったとしても凡人よりはるか上の『デキ』なのだ。
 王子だというだけで国最高の頭脳から勉強を教わっているに過ぎないアリョーシャが、そんな期待に応えられるはずもなく、すげなく扱われていた。

「陛下、家庭教師を変えてください」
 そういうわけで、アリョーシャは女王に直訴した。
 姉のエレーナは二十歳そこそこではあるが、十代半ばから君主として王座についている。弟に家庭教師を選んだのも、もちろんエレーナだった。
「教師を変えろ? なにか不満でもあるのか?」
 エレーナは訴えを予想もしていなかったらしく、不思議そうに淡い金色の髪の毛をゆらし、緑色の瞳をきょとんとさせる。
 誰が見ても女王と王弟――つまりエレーナとアリョーシャは姉妹のようにそっくりだと考えるだろう。まだ歳若いせいか、王子には男っぽいところがまったくなく、一瞬少女と見間違えそうなあどけなさだ。双方とも髪を肩に垂らしているせいで、余計にそっくりになっている。
 ちなみに、アリョーシャの正式な身分は王弟ではあるが、面倒くさいのか誰もが彼を王子と呼ぶ。
「ソフィーヤは余がじきじきに選んだのじゃぞ。それを変えろとは、そなた、突然なにを申すかと思えば……」
 エレーナは驚きが去るとまず不快になったらしく、目を細めた。
「そなたの教育もタダではないのだぞ。いくら給金を払ってソフィーヤを雇ってやっていると思っている。変えるとなるとまた費用がかさむではないか」
「ですからね、姉上――陛下。僕だってソフィーヤに習いたいのは山々なんです。でも、向こうがイヤがるんだから仕方ないでしょ?」
「なに? イヤがる? 聞き捨てならんな。どういう意味じゃ」
「その、つまり……ソフィーヤは大学を主席で卒業したでしょ。だから、僕を相手に勉強を教えるより、もっと有意義な学問の研究に励みたいようです」
 アリョーシャは少し口ごもりながら説明した。言いながら情けなくなったからだ。
 女王はしばしじろじろと弟を眺めわたし、それから鼻を鳴らした。
「はん、なんじゃそんなこと」
「そ、そんなことはないでしょう。ソフィーヤの冷たさったらないんですよ!」
「アホの弟を持つことに比べたら『そんなこと』に過ぎん」
 エレーナはにべもなく言い放った。
「余は君主じゃぞ、その弟がアホではしめしがつかんではないか。だからこそ教師を雇っているのじゃ。冷たいぐらいなんじゃ、自分でなんとかせい」
「僕はそんなに頭は悪くないと思うんですけど、普通の基準では」
「頭が悪くなかろうが無知ではアホも同然じゃ、バカめ。だいたいな、そなた余の弟だからと言ってわがまま放題できると思ったら大間違いじゃぞ。おい、そろばんを持て!」
 背後に控えている侍従に顔も向けず言い放ちながら、エレーナはなおも続けた。
「冷たいというが、そなたが仲良くなる努力をしておらんのじゃないか? そのツラは飾りか。余に似たおかげでせっかく美形なのに、使わんでどうする。おお、すまぬ」
 すばやく戻ってきた侍従からそろばんを受け取る。
「そもそもソフィーヤを選んだのは姉から弟へのありがたい配慮によってなのじゃぞ。そなたときたら、身辺に女っけがない上に奥手とくる。初夜の床で嫁に笑われる前にどうにかしてやろうという――」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「うるさい。とにかく、口説くなりなんとかして、ソフィーヤと仲良くなれ。多少デキが悪くても優しくはなるじゃろう。だいたいな、我が国の財政は父上の放漫経営によって火の車なのじゃぞ! そこからそなたの教育のために投資しておるのは、ひとえに立派な男となって余を助けてほしいからじゃ、なぜそれがわからんっ」
 説教しながら自分の言葉に釣られて激昂してきたのか、エレーナは猛然とそろばんをはじいた。
「そなたの教育に使ったのがこれじゃ!」
 ぐいっとそろばんを押し付けられて、アリョーシャはうろたえた。
「思ったより使ってるなあ……」
「そうじゃろ。だがな、そなたがボンクラになればこの金もパーじゃ。ところが、仮にそなたが余の弟たるにふさわしい男に育った場合、こんな額ぐらいすぐにチャラになるのじゃ」
「そりゃそうだろうけど……」
 エレーナは王座にふんぞり返り、冷たい視線をアリョーシャ向けた。
「ともかく、余としてはこの投資を無駄にするわけにはいかん。早急にソフィーヤを押し倒してこい」
「はい――いや、ええっ!? さっきの、本気だったの?」
 惰性でうなずいたところで言葉の意味を理解し、アリョーシャは驚愕した。驚きのあまり、人前で姉に接する時の敬語を忘れ去った。
「なにを言っておる、余はいつでも本気じゃぞ。だいたい、そなた半年もソフィーヤと密室でふたりきりだったというのに、ちちぐらい触っておらんのか」
「触ってるわけないよ」
「情けない。これだからわざわざソフィーヤを選んだというに……だいいち、あんな歳若い美貌の女が教師になるとは、おかしいとは思わなかったのか。普通ならもっと歳のくった爺さんを選ぶぞ」
 もちろん、疑問に思ったことはなかった。
「あの、姉上も嫁入り前の女性なんだから、あまりそういう冗談はよくないと思うな」
「バカめ、なにが冗談じゃ。余を愚弄しておるのか。そなたはどうしてそう危機感がないのかのう……」
 エレーナがいかにもあきれたように手に持った扇で顔を仰いだ。
「それともそなた、まさか女に興味がないとか申さんじゃろうな」
「そっ、そんなことあるわけないだろ」
「そうか。いや、女っぽい容姿なんで心配はしてたんじゃが、それはなによりじゃ。しかし、だったら一度も考えたことはないのか? ソフィーヤを押し倒してみるとか、まああわよくば下着をのぞいてみるとか」
 アリョーシャは一瞬沈黙した。無論、そんなことを考え付いたことはなかったからだ。
 とはいえ、王子だって女性に興味ぐらいある。いけないことのような気がして深く考えることはなかったが、ぼんやりと思い浮かべることぐらいはあった。
 しかし家庭教師がその想像の対象になったことはなかった。十八歳の、そこらにはいない美少女で、目下彼に近しい女性の代表格なのにだ。
 なぜなのか、理由はよくわかっている。アリョーシャの中でのソフィーヤは、性別とか容姿とか、そういうものを超越した恐怖の対象だからだ。
「……も、もちろん、ソフィーヤについてあのー……そういうことを考えたことはあるよ」
 が、正直に言うと男色の嫌疑をかけられかねないと判断し、彼は嘘をついた。
「だ……だって、ソフィーヤは顔だけならかわいいし、それにそのー、胸も大きいし……なんといっても腰つきが……」
 嘘を補強するために次々と家庭教師の美点を数え上げる。
 エレーナはなぜか感心顔になった。
「ほー、なんにも知らん振りをしていっぱしのことは考えておるのじゃな。それならいつでも押し倒せるではないか」
「そ、そりゃそうだよ。僕だって男だもん……でも、いきなりはちょっと、ソフィーヤのほうも困るんじゃないの?」
「なにを言っておる。よろこぶに決まっているではないか」
 エレーナは眉をひそめた。女王には臣下が『困る』とか『とまどう』とか、ましてや『嫌がる』ことなど想像もできないのだ。
「あれも女じゃ。そなたを受け入れておるうちに態度も軟化してくるじゃろ。ぐちぐち申さず、試して――いや、待て。そなたまさか不能ではないじゃろうな」
「はっ?」
 女王は思いつきを口に出したつもりのようで、笑顔を浮かべていた――最初は。しかし、不安になったのか、疑いのまなざしで弟を眺めわたす。
「いや……そういえば、そなたはもう十四になるというのに、声変わりもせず……背も低いし……なにか機能に問題があるのでは……」
「な、なな、ないよ、そんなの! ちゃんと機能してるよ!」
「ほう、なら一番最近に『機能』したのはいつじゃ」
「あ、あの、姉上、ちょっと」
「いつなのじゃ」
 アリョーシャはここから走って逃げ出したくなった。とはいえそんなことをしても無駄なのはわかりきっている。女王に忠実な侍従が走って追いかけて来るだろうからだ。ひっとらえられたついでに、『現物が機能している証拠』を見せろと要求されるかもしれなかった。なにしろ一度逃げているので、疑惑が濃厚になっているだろう。口による証言ぐらいでは信用してもらえないかもしれない。
「……今朝」
「なんじゃ? 声が小さくてよく聞こえな――」
「今朝だって!」
 いますぐ消え去ることができればいいのに、王子はそう思った。王座の姉と、その周辺にはべる侍従たちの前でこんなことを絶叫する羽目に陥っているのだ。
「け、今朝その……機能したから。だから、そこはもういいって」
「聞いたか、今朝じゃと! 女のような顔をしてそこはちゃんとしておるのじゃな!」
 恥の上塗りとばかりに、女王が周囲の侍従にささやく声が筒抜けてきた。
「姉上、い、いくら僕の顔がこうでも、ちゃんと男なんだ。あんまりそういうこと言うと傷つくから」
「しかしな、姉の心配もわかってもらわねばのう……ま、疑惑を払拭するいい機会ではないか。ソフィーヤを押し倒すのになんの問題もないんじゃから」
「えっ? ええ、その、ええと……」
「よし、今夜じゃな」
 予定があっさり決まって、エレーナは晴れ晴れとした顔でうなずいた。
「こういうのは思い立ったが吉日というやつじゃ。場所はそなたの部屋でいいな」
「話が早すぎる……」
 青くなったアリョーシャに、エレーナは冷酷な視線を向けた。
「うるさい。いいか、そなたがあんまり反抗したり、ことを実行しそこねたりしたら、それこそ機能不全と疑わなければならん。アリョーシャ、これは命令じゃぞ――ソフィーヤを犯せ、よいな」

 ソフィーヤはその年頃の少女としては背が高く、王子よりも上背がある。抜けるように白い肌。黒髪はゆるやかに肩と背中に流れ、その知性をあらわす青い瞳は、一見穏やかそうだった。大学を主席で卒業したものだけに許される白金の留め金と青いリボンが髪に光っている。
 外見だけなら、完全なる美少女と言えた。たおやかそうで、そして、神秘的な雰囲気すら漂わせている。
「王子、では、服をお脱ぎください」
 しかし、実際のところは冷徹かつ職務に忠実だった。
 深夜、王子の部屋に来るなり、ソフィーヤはいつもの無関心そうな口調でそう言った。
「……えっ」
「えっではなく、服をお脱ぎくださいと――」
 アリョーシャはそれでなくとも混乱中だったので、ソフィーヤの言っている意味がよくわからなかった。服を脱げというのはどういうことなのか。
「……陛下からご下命があり、わたしが王子の童貞を下賜されることになったそうなのです」
 家庭教師は内心をうかがわせない淡々とした口調だった。
 どうやら、手はずは整えられているらしい。アリョーシャはようやくそう悟った。犯せだのなんだのと言い渡したものの、弟の性格ではそうたやすくことが運ぶはずもないと、エレーナは考えたらしかった。
 確かにそうだが、なにもかもをソフィーヤに話すとまでは思っていなかった。そして、なにもかも承知の上でソフィーヤが来るとも思っていなかった。
「そ……ソフィーヤ、あの……」
「ただでさえ面倒で、気が進まないのです。やるのか、やらないのか。どちらですか」
 ソフィーヤはあくまで穏やかに、微笑みさえ浮かべて言った。が、その単語選びには紛れもない非難と怨嗟が込められている。
「ごっ……誤解しないでほしいんだけど、僕が自分からこんなことを姉上に頼んだと思ったら大間違いなんだからな。僕は――」
「言い訳はよろしい。服を脱ぎなさい」
「はい」
 アリョーシャはのろのろと服に手をかけた。なぜこんなことになっているのか、理解しがたかった。家庭教師の冷淡な視線が痛いほどだ。
「どうしました、手が止まっていますが」
「そ、そんなことを言っても……そんなにじろじろ見られたら脱ぐに脱げないだろ」
 あまりの恥ずかしさに、却って普段より強気になりながら、王子はちらりと家庭教師を見た。
 部屋にはろうそくの明かりがあるきりだったが、彼女のことはいやにはっきり見える。普段は気にしてすらいなかった、服にしっかり包まれているものの、やけに存在感を主張している胸や、細い腰が気になって仕方がない。
「王子は脱がせてもらうのが好みですか」
「じ、自分で脱ぐよ!」
 アリョーシャは慌てて上着を抜いた。が、次に腰のベルトに手をかけたところでぴたりと手が止まる。
(まずい……)
 この状況に早くも反応していた。姉に正直に申告したとおり、ごく普通にこういった反応は起こる。だいたいは朝起きぬけにこうなっていることが多いが、時々、こっそりとよからぬことを想像した時にもこうなる。
 彼としては、混乱しすぎて自分でも自分の気持ちがよくわからなくなっていたのだが、身体のほうはしっかりと期待しているらしい。
「ペニスが勃起しているのは、服の上からもわかりますし、恥ずかしがることはないですよ」
 家庭教師は優しげですらあった。しかし、その優しさが怖い――普段はこんな表情を浮かべたりしないからだ。
「は、恥ずかしがってなんか! た、ただ……」
「顔を真っ赤にして言っても説得力がありません。それがいまから臣下の純潔を無理やり奪おうとする、横暴な王族の姿ですか?」
「無理やりって……どっちがだ」
 ほとんど涙目の王子を、じっくりとやけに長々と見渡したソフィーヤは、やがて目を細めた。
「ふう、仕方ありませんね」
 その瞳には間違いなく怒りがあったので、アリョーシャはおののいた。
「い、いやだっ! なにを考えてるっ」
 慌てて後退しながら、アリョーシャは逃げる場所を探した。入り口はソフィーヤがふさいでいる。窓は――とうとう死にたくなった時の最後の手段だ。なにしろここは三階である。クローゼットに通じる扉もあるが、そこに逃げ込んだところで、もうどこにも行き場はない。
「別になにも考えておりませんが」
「嘘だ。どうせ、本当はすごくイヤだけど命令された以上仕方ないから、かくなる上は僕を思う存分辱めて仕返ししてやろうと思ってるんだろ!」
「そういう洞察力だけは評価に値します」
 アリョーシャはじりじり迫ってくる家庭教師から脱兎のごとく逃げ出した。
 が、すぐに取り押さえられてしまう。わき目を振らずに走り出した結果、椅子に蹴躓いて転んだからである。
「ひっ」
 背中にドカッという感覚があり、やわらかい肉の感触が伝わってきた。上に乗られたのだろう。
「かわいい声を出しますね。いやいややっていたのに、なんだか少し楽しくなってきました」
 上からソフィーヤの声が降ってくる。
「こんなこと間違ってる! ソフィーヤもイヤならちょっとは抵抗してよ!」
「抵抗が許される身分だとでもお思いですか? わたしだって、職を盾に脅されたりしなければ……」
「えっ……姉上、そんなことしたのか?」
 ぎょっとしてアリョーシャが振り向くと、馬乗りになっているソフィーヤの顔が目に入った。驚くほど無表情だ。
「ええ、まあ……こんなことで学者生命を絶たれたくなければと、はっきり脅されました。わたしとしても、一時の不愉快と将来を天秤にかければ、後者を選ばざるを得ませんしね……教師という役目はあと五、六年もすれば終わるでしょうし」
「……」
「そういうわけで、早めに終わらせていただけるとうれしいのですが。いちいち抵抗したり、暴れたり……まったくもって生産性のない行為です。だいたい、王子としては願ったりかなったりの話では? なにしろ女性と違って、男性は最初から気持ちいいらしいですから……」
「……」
 アリョーシャは言葉を返せず、黙っていた。我が姉ながら強引だとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかったからだ。
 しかしそれはそれとして、腰と脇腹に密着するお尻と太腿の感覚が妙に気になった。やわらかく、思ったよりずっしりしていて、そして暖かい。さきほど怯えた時におさまった生理現象が、ふたたび復活しているのを感じる。
「うわあっ!」
 一瞬ぼんやりした隙に、いきなりズボンを尻の半ばぐらいまで下ろされた。
「お覚悟を、王子」
「だ、だめだって、今ちょっとまずいから……っ!」
 抵抗むなしく――アリョーシャには、最早それが本気の抵抗なのか、あるいは抵抗の振りなのか、よくわからなくなっていた――、ひっくり返される。
 その上にあらためて馬乗りになりながら、ソフィーヤはズボンから見事にはみ出してそそり立っているペニスを眺めた。
「……実物は結構大きいですね。身体が小さいから、てっきりもっと小さいかと……」
「……」
「確か我が国の統計上、男性の平均は……それに比べてもかなりこれは……」
「あの、大きさはもういいから」
「そういうわけにはいきません。痛いのはわたしなのですから」
 ソフィーヤは少し考えたようだった。
「そうですね。理想としては、体格相応のものを期待していたのですが……それならいろいろ言葉でいたぶれますし。ですが、こうなるとどうしていいやら」
(そんなことされてたら、立ち直れないところだった……)
 目の前の女が改めて怖くなってきた。
「とりあえずもう少し小さくなりませんか?」
「えっ? そ、それは難しいよ。だって、こうなったらもうその……」
「一度射精するまで小さくならない?」
「……」
 アリョーシャの表情から、その答えが正解であることを悟ったらしいソフィーヤは目を細めた。
「でしたら話は早いでしょう。早く射精してください」
「そ、そんなこと言っても、無理」
「なぜ?」
「なぜ? って……」
 心底怪訝そうに言われると、アリョーシャもうろたえるしかなかった。
「その……刺激しないと無理だよ」
「刺激? ああ……そういえばそうでしたね。そんなようなことを、書物のどこかで見たのを思い出しました」
 ソフィーヤはため息をついた。
「わたしとて、この分野のことにはそう精通しているわけではないので。では、早く刺激してください」
「刺激してくださいって……僕がやるの? ここはソフィーヤが――」
 淡い期待を抱いていたので、王子は慌てたが、家庭教師は冷たい一瞥を彼にくれただけだった。
「なぜわたしが? わたしは準備万端になったら行為を遂げるだけです」
「それじゃ、きみの前で自分でやれっていうの?」
「別に恥ずかしいことはないでしょう。ここまで来たら」
 じゅうぶん恥ずかしかった。確かにもう股間はさらしてしまったが、それとこれとはまた別の問題だからだ。
 しかし王子の気持ちなど斟酌する気配もなく、ソフィーヤは首をかしげた。
「はじめてではないでしょう? 手淫ぐらいしたことはありますよね?」
「そっ、それは……」
「ほら、あるでしょう。どうぞ、遠慮なくやってください」
 確かにその行為の経験はあるが、アリョーシャは自分のいきりたった股間に視線をやったまま動けないでいた。
 この期に及んでも萎えないのはどういうわけだろうか。その手の素質が自分の中にあったというのだろうか――ぐるぐる考えているせいで、混乱に拍車がかかる。
「ふう。仕方ないですね……」
 ソフィーヤは顔をしかめると、王子の手を取って男根に導いた。
「わ、な、なにを……」
 慌てているうちに、しっかりと握らされてしまう。予想以上に熱を持って脈打っていた。
「こうでもしないと、早く終わらないじゃないですか」
 ソフィーヤは自分の手をしっかりと添えて、勝手に王子の手を動かしはじめた。
 ぎこちなく、適当感あふれる動きではあったが、それでも王子の手を包んでいる繊細な手と、揺れる胸にアリョーシャの陰茎は容赦なく反応した。
「だ、だめだって、ソフィーヤ!」
「もっと気合を入れなさい。小さくなるどころか、大きくなっているじゃないですか!」
「うっ、うう……」
 ペニスからつたわってくる刺激は、無意味なものから、もどかしくも扇情的な感覚へと変化を遂げた。自分でやる時ならば、ある程度勝手がわかっているのでこんなにじれったくはない。ところが、ソフィーヤが無理やり王子の手を使うという変則的な行為になっているせいで、ほしいところにほしい刺激が来ない。
「だ……だめだよ……あ、ううっ……」
「……なにか出てきましたが……」
 ソフィーヤはじっと、露出した頂点からしたたって来た液体を見つめた。
「これはなんです?」
「えっ? あ、そ、その……知らないけど……ふう、あ、こ、興奮した時とかに、その……」
「なるほど……では、もうすぐ射精するということですか?」
「い、いや、その……まだ……」
 じんわりとしたもどかしすぎる感覚に、王子はフラフラになりながら首を振った。
(ああ、そうか……早く射精さないといけないんだった……)
「ソフィーヤ、その、そうじゃなくて……」
「なんです? まだ抵抗しているんですか?」
「んん、そ、そうじゃなくて、そのっ……それじゃいつまで経っても無理……」
 状況からくるぞくぞくとした心地よさが背筋を這うものの、肝心の刺激のほうが物足りなかった。
「なんですって? それは困るのですが……」
 ソフィーヤはよくわかっていないらしく、懸命にアリョーシャの手を操りながら、眉をひそめる。
「ふう、う、ねえ、僕のほうをどうにかするより、きみのほうをどうにかしたほうが、ん、早いんじゃないかと」
「わたしのほうを?」
 さきほどから奇妙な音がする。それはアリョーシャの手の中、こすりあげられる隆起が発していた。
 したたった粘液がいつの間にかからんでいる。ぬるぬるすべる二人の指がさらに王子の頭の回転をにぶらせた。
「その、女の子にも準備がいるって……」
「わたしですか……。確かに、そういう話は聞いたことがありますが」
(早くしないと、頭がおかしくなるかもしれない)
 と、アリョーシャは思った。とにかくのんびり会話している場合ではないという切迫感がある。しかし、かといってどうしたらいいのかはよくわからなかったので、また言った。
「き、きみのほうの準備がすんだら、す、すぐすませようよ。あっ、あんまり、長引くと……ふう、はあ、よ、夜が明けちゃうから」
「そういっても、わたしのほうの準備など、いったいどうやって――」
「そ、それだったら、僕が知ってるから」
 実質のところ、知っていると断言するにはほど遠い知識しか持ち合わせていなかったが、ぼんやりしているせいかすらすらと口から言葉が出た。
「女の子も、いい気持ちになればそうなるよ」
「でも、どうやって? わたしは面倒と思いこそすれ、別にいい気持ちにはなっていませんよ」
「そ、それでもいいよ。僕がやるから」
「……」
 かなり思い切ったことを言ったつもりだったが、ソフィーヤは怪訝そうな顔なままだった。
 王子は頭のどこかで、このまま無理にやってしまったらもっとも手っ取り早くこの切迫感も満たされるのではないだろうか、と考えた。その思いつきはかなり魅力的で、一時彼の思考を占拠しかけたものの、まだペニスを刺激し続けているソフィーヤを見て我に返った。
(あとでなに言われるかわかったもんじゃないからな……とにかく、早く終わらせないと)
「あの、ソフィーヤ、ちょっと上からどいてくれる?」
「構いませんが、逃げ出さないでしょうね? わたしの職がかかっているのですよ」
「こんな状況になったら、逃げるどころじゃないよ」
 疑わしげなソフィーヤを半ば押しのけるようにして、王子は快楽の拷問から抜け出した。じんわりとあおられ続けたおかげで、陰茎は予想以上に膨れ上がってしまっている。そう、こんなものをぶらさげたままどこかに逃走するのは、心情的にも肉体的にも避けたい。
「あの……それじゃ、スカートをあげて」
 アリョーシャが言うと、ソフィーヤはなんとも言えない表情になった。
「わたしが? ここで?」
「だ、だって、あげなきゃなにもできないじゃないか! どうせあげることになるんだし……」
「隠したままなんとかする予定でいたので困ります」
「……」
(だめだ、埒があかない)
 王子は眩暈を覚えた。積極的なのか奥ゆかしいのか、どちらかにしてほしい。
 いや、よく考えると、どうやら自分の肉体を晒すのには抵抗があるものの、なにかされること自体にはそれほどこだわっていなさそうだ。
「それなら……僕は見ないから、スカートの中に手を入れるだけなら?」
「ですが――」
「触れなきゃなんにもできないよ」
 ソフィーヤは眉をひそめた。
「それもそうですが……わかりました、それは許します。手を入れるだけです。見ないように気をつけてもらわないと――」
「そ、そう」
 アリョーシャはほっとしつつ、再び股間が熱くなってくるのを感じた。なんといっても、女性のスカートの中に手を入れるのははじめてなのだ。
「じゃあ、僕はソフィーヤの後ろにまわって、手を入れるから……それなら、見えないってわかるだろ」
「……」
 疑わしげなソフィーヤの背後にまわりつつ、王子は心臓を高鳴らせ、手を彼女のスカートの下にそっと忍び込ませた。
 中はふわふわとして暖かかった。やけにたっぷりとしたスカートの生地をかきわけるようにしていると、ふとすべすべしたやわらかいものに手が当たる。
 太腿だろうと察しがついた。しっとりとして、軽く汗ばんでいるような気がする。
「あまり触るとくすぐったいのですが……」
「あ、ああ、ごめん」
 思わず撫で回しているところを注意されて、王子は我に返った。
 それにしても、このいいにおいはなんだろうか。アリョーシャは夢見心地になりながら、ソフィーヤの長い髪に顔をうずめた――手を前にまわそうとすると、勢いそういう姿勢になるからだが、進んでそうしたせいでもある。
 腿を辿るようにすると、腕にまくられてスカートがずりあがり、白い脚が姿をあらわす。その時点でスカートを跳ね除けてしまわないようにする努力が要った。
 ソフィーヤは無言だった。顔は見えないので、どういう表情なのかもわからない。
「あ、あの……ここ?」
 両脚の付け根、薄い布で覆われた部分に指が触れて、王子はおそるおそる訊ねた。
「そこですね」
 ソフィーヤがそっけなく答えた。
(ここからどうすれば……)
 頼りなさ過ぎる布の感触ごしに、暖かい肌の感触がある。女性にとっての秘密の場所だ。だが、これ以上進んでいいものか、それよりも進んでなにをするのか、王子はうろたえた。
 とにかく大言壮語してしまった以上、なんとかするよりほかはない。おそるおそる、下着のクロッチの部分を撫でてみた。
「ん……」
「な、なに? 痛かった?」
 反応があったので、ドキリとして手を止める。
「いえ、別に」
「そう……」
(この辺なのかな)
 アリョーシャは再び、そっと同じ場所に触れた。が、今度は反応がない。とすると違うのだろうか。
 王子という生まれのおかげで、その手の知識からは遠ざけられて育ってきた。どこかから漏れ聞こえるあれこれのおかげで、それなりには理解しているものの、具体的にとなると難しい。おかげで、そこにはなにがあってどう感じるのかさっぱりわからず、アリョーシャはおどおどと手探りするしかなかった。
 やがて、ふっくらとした肉のあいだにある溝のようなものを見つけた。あくまで布ごしの感覚なので、はっきりとしないが、確かにあるようだ。
 それ以上下に手を進めると、どうやらお尻のほうへ行ってしまうらしい。そっちも興味はあるが、今はそれどころではない。アリョーシャの股間からの欲求が激しくなる一方なので、一刻も早くソフィーヤの準備を終わらせなければならなかった。
 さっき見つけた溝があやしいと指を這わせるが、布の上からではそれ以上なにも発見できなかった。せいぜい、つっと撫でてみると、ソフィーヤの背中がちょっと震えたぐらいだろうか。
(この下だ……)
 しばし下着の上からそこをいじっていると、段々確信のようなものがわいてきた。
「あの……なんだか……」
 その時、突然ソフィーヤが声を発したので、王子は死ぬほどびっくりした。
「えっ?」
「下着が塗れているような感じがあるのですが……」
「え? そんなことは……」
「んんっ……」
 慌てて指で少しだけ強めに溝の部分を押さえてみると、ぬるっとすべるような感覚と、わずかな湿り気が伝わってくる。
「あ、あれ……なんだろう。まさか、ソフィーヤおもらし――」
「そんなわけがありますかっ! このわたしがまさか、そんな真似をするなど考えられません」
「でも、なんだかぬるぬるしてるぞ」
「王子がいつのまにか、変なものをくっつけたんでしょう。腰に思いっきり当たっていますし……」
 確かに、彼の陰茎は興奮にはちきれんばかりになっており、いつの間にか密着していた腹と背中とに挟まれて窮屈そうになっている。
「……もしかして、これで準備が整ったんじゃ……」
「なんです?」
「僕のも準備ができると液体が出てきたし、ソフィーヤのもそうなんじゃないの?」
 ソフィーヤはしばし沈黙していたが、やがて言った。
「……そうですね、その可能性は高いと思います」
「じゃあ、今までのやつ一応気持ちよかったのか……」
「多少は」
 あっさり認め、ソフィーヤはちらっと振り向いた。
 少し顔が赤くなっている。表情は冷静さを保ったままだったが、胸が大きく上下しているところを見ると、見掛けよりは動揺しているのかもしれなかった。
「準備ができたなら、さっさと行為に移りましょう」
「えっ。でも、もう少し準備したほうがいいんじゃないの?」
 突然言われたので驚きつつ、アリョーシャは浮かれた感じを隠せずに言った。
「痛いのはソフィーヤなんだろ?」
「これ以上準備しても無駄です」
 やけにきっぱりと言い放ちつつ、ソフィーヤは立ち上がった。密着していた背中がふっと遠くなって、王子は思った以上に残念な気分を味わった。
「では王子、そこに寝てください」
 と、ベッドを指差す。
「寝るの?」
「中を見せずに行為に及ぶにはそれしかないでしょう」
「……」
 もうどうにでもなれと思いつつ、アリョーシャは素直に移動し、寝そべった。股間のペニスが腹を打つ勢いになってしまっている。
 後から来たソフィーヤはまじまじと王子の屹立を眺めた。
「……さっきより大きくなってませんか?」
「し、仕方ないじゃないか」
 今大きくなっていないでいつ大きくなれというのだろう。アリョーシャはもはや自棄気味だった。
「それより、ここからどうするの?」
「ソレを入れるべき場所に入れるんです」
 答えるや、ソフィーヤはベッドに乗り、王子をまたいだ。長いスカートがかぶさっているせいで、やはり肝心な場所は見えない。
「……どこに入れるか知ってる?」
「知識としては」
 ソフィーヤは真剣な表情でスカートを少し持ち上げ、ふぁさっとペニスごと王子の腰を覆う。そのまま腰を前にずらしたので、膝立ちのソフィーヤが彼のものの真上にいることになる。
 好奇心を感じた。あの中では今なにがどうなっているのだろう。
「ではいきますよ」
 ソフィーヤが後ろに手をまわし、アリョーシャから見えないようにスカートをまくって下着をずらした。正面からは相変わらずなにも見えない。
「あっ」
 ふっと腰を下ろされて、ペニスになにか熱い、ぬるっとしたものが触れる。やけにやわらかくて、くらくらするような感触だ。
「ん……ここらへんか……」
 家庭教師は独り言のようにつぶやき、やはり後ろからまわした手できゅっとそれを握る。先端が肉のひだのようなものに触れるのがわかった。
「あ、そ、ソフィーヤ、やっぱりやめよう、なんだかよくない気がする」
「なにをいまさら……」
 突然怖気づいた王子のものに狙いをさだめながら、ソフィーヤは目を細めた。
「だって、ソフィーヤも処女なんだよね? ぼ、僕はともかく、そういうのは――あァッ!」
「くうっ……」
 ずるん、というか、ぐぬっ、というか、ともかくたとえようのない感覚が背筋を走る。肉の壁にみっちりと包まれた感覚があって、アリョーシャは目の前が真っ白になった。
「こ、これでまだ全部じゃないみたい……ですね」
「は、入ってるよ、だってもう、うあっ」
 ソフィーヤが顔をしかめるのをよそに、王子はさらに飲み込まれた。湿り気を帯びたそこは固く――だが、隙を見せるようにやわらかく――彼を拒んでいるようなのに、ぐいぐいとかきわけながら奥へと進んでいく。
 ペニスに伝わってくるあまりの熱に、王子はもうまともなことなどなにひとつ考えられなかった。
「あ、ああっ! う、うう……きついっ」
「そのぐらい我慢を……っ、あ、はあ、あ、くううぅっ!」
 ぐいっ、というような抵抗を最後に、ぺたりと腰と腰とが密着する。奥の奥までたどりつき、ソフィーヤを蹂躙した――と感じた瞬間、アリョーシャは爆発していた。
「だ、だめだっ、ああああっ! あーっ」
「ひっ……くぅ……」
 どくんと脈打った屹立から、白濁したものがほとばしる。肉がぴったりと彼を覆っているせいで行き場をなくしているはずなのに、そこをさらに押し広げるように、射精が止まらなかった。
「あ、や、やめ……」
 逃げるように腰を引くソフィーヤの腰を抱えつつ、奥に押し付けながら長いことそうしていた。
「ああっ、はあ、はあ……」
 腰の辺りに漏れ出した精液がたまっているらしいのを感じながら、彼はようやくソフィーヤの腰を離した。
「はあ、はあ……もう終わりですか?」
 青息吐息になりながら、どこかほっとしているような声だった。
 アリョーシャはぼんやりとうなずきかけ、ふと、ソフィーヤを見た。
 彼女は苦痛をこらえているのか、ひどく辛そうながらも、それを眉の辺りに漂わせるのみだ。我慢しているのか、あるいは本当にそれほど痛くはないのか、どちらかはわからない。
 それを見た瞬間、なんとなく悔しくなった。そのせいではないだろうが、股間のものもまだ力を失う様子はない。
「ソフィーヤ、その……まだ」
「なんです?」
「まだいけるみたいなんだけど……」
「……」
 たぶん、本当はすごく辛いのではないか、と思った。なぜならソフィーヤは表情を動かすまいと努力したようだが、ごくりと喉を鳴らした気配があったからだ。
「……まだいけるなどと浅ましいことを……これでじゅうぶんでしょう」
 当然ながら、それを素直に訴えるわけでもなく、ソフィーヤは腰を浮かそうとした。
「あっ、くぅ……」
「んんっ」
 途端にふたりとも声をもらす。一方は快楽のために、一方は苦痛のために。もちろんソフィーヤは後者で額に汗を浮かべている。
 どうやら少しでも動かすと痛みを感じるらしく、腰を上げるだけのことも容易ではなさそうだった。
「はぁ、はぁ……どうして射精したのに小さくならないんですか!」
「そんなことを言ったって……」
 こんなに気持ちよくては無理だ、と言おうとしたが、王子は声をつまらせた。ソフィーヤが身動きしたせいで、情けないあえぎ声になりそうになったのだ。
「は、早く小さくしてください。抜けないではないですか……」
「ま、待って、今動いたら僕のほうが止まらなくなりそう」
 さきほど一度射精しておいてよかったと言うべきか。理性はあやういながらもアリョーシャの手の届く場所にあった。ソフィーヤが少しでも身体を動かそうものなら、途端に吹っ飛びそうになるもろい理性ではあったが、ないよりは冷静でいられる。
「とにかくじっとしていてよ。今はまだ、ソフィーヤもつらそうだし……」
「つらそう? わたしが? まさか、こんなもの……別になんともありません」
 意外にもソフィーヤはまだ強がっていた。虚勢が堂に入りすぎて、本当に平気そうに思えたぐらいだった。
 アリョーシャも一瞬騙されそうになったが、屹立をきつすぎるほどしめつけている肉襞や、大きく息をついている胸に、はっと我に返る。
「全然なんともなさそうに見えないよ」
「そ、そんなことはありません。わたしはこう見えても大学を主席で卒業したのですよ。このぐらいでつ、つらいなどと言っていられませんから」
「……」
 この場において大学やそれを主席で卒業する頭脳がなんの役に立っているのだろう、とあきれた。ソフィーヤは意地でも苦痛を認める気はないらしく、汗を浮かべながら見下すように笑ってみせた。
「これは職務上やむを得ず行っていることですから、なんともないのです。だ、だいたい! わたしのことばかり言いますが、王子のほうがつらそうです。我慢してるんでしょう?」
「うっ、そ、それは……」
「我慢の足りない王子のこと、わたしよりつらいに決まっている。ふん、続きをしたらどうですか? 仕方ないから、つきあってあげます」
 さきほどまで早く抜けだのと言っていたのをとっくに忘れたのか、ソフィーヤは鼻息荒くそう宣言した。その顔は上に立てた満足感からか、少し得意げですらあった。
(今まで気づかなかったけど……僕よりずっと子供っぽい性格なんじゃないか、この人)
 アリョーシャはまじまじと彼女を見つめた。そう、プライドが高いのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。この状況においてもまだこんなことを言っていられるとは、ある意味強靭な精神力だとも言えなくはないが、その動機は子供っぽい競争心なのだ。
「あの、それじゃ、続きしていいの?」
「ええ、もちろん……うぐっ」
 ちょっと腰を突き上げただけで、ソフィーヤの喉から悲鳴がもれる。アリョーシャは困惑しつつ、なんとなく興奮した。
「無理してるの、ソフィーヤのほうじゃないか」
「む、無理など、ううっ、なれないことですから、少しその……とにかく、平気です」
「だ、だって、ものすごくきつくて動かすのも苦労するぐらいだし……」
「それは……わたしのせいじゃなくて、王子のが大きすぎるからいけないんでしょうっ!」
「……」
 よくわからないが、こんな場面にも関わらず激昂するソフィーヤがやけにきれいに見えて、アリョーシャは衝動にかられた。
「うっ、あ、ああ!」
「ソフィーヤ!」
 しがみつくように腰を抱え込んで、彼女の奥を突き上げる。ソフィーヤは耐えようと手で口を覆ったものの、いくらかは悲鳴が漏れ聞こえた。
「うっ、ううっ、うっ」
「あ、あああっ」
 がくりと手をついて王子の胸に頭を垂れたソフィーヤの細い腰を引き寄せる。スカートのせいで相変わらずなにも見えなかったが、ペニスを包む熱い肉の感覚と、衣擦れと扇情的なねばつく水音のおかげで、かえって行為に没頭した。
「はあ、はあ、あ、うう、ああっ、すごく、き、気持ちいいよっ」
「……っ、っ、うううっ」
 無我夢中のうちに、ソフィーヤは完全にアリョーシャの上にのしかかるようにして、ぐったりしはじめた。意識はあるようだが、揺さぶられるままになっている。余裕は消え去って、涙を浮かべて耐えているようだった。
「ん、くぅ、う、っくっ」
「も、もうすぐ射精そう……っ」
「は、はやく……あ、んんっ」
 受け答えにも懇願するような調子がある。王子は突然頭が真っ白になった。
「あ、あああっ! 射精るっ! あーっ、あああっ!」
「……っ!!」
 その瞬間、暴発したのかと思うような勢いで精液をソフィーヤの中にぶちまけた。
「ああっ、うあ、ああっ……」
「ふうっ、う、んん……」
 一度目と同じように、完全に射精しきるまでにはしばらくかかった。断続的に吐き出される白濁でソフィーヤのなかを汚しきる。
「ふうっ、ふうっ……」
 ソフィーヤは王子の顔の横で息をついている。ぼんやりと、いまさらながらの罪悪感がアリョーシャの心中に浮かんできた。
「あ、あの……ソフィーヤ……」
「は、はい、はあ、はあ……。なんで、しょう」
「ごめん、その……まだいけるみたい……」
「……」
 ソフィーヤの表情は見えなかった。真横にある上に髪の毛がかかっているせいだった。
「……王子」
「なに?」
「今日のところはこのぐらいに……」
「……つらい?」
「すごく……」
 アリョーシャは、素直な答えを返すソフィーヤとはこんなにも新鮮なものだったのか、と思った。
「見事やりとげるとはのう……」
 結局あのあともう一度行い、ソフィーヤに涙を浮かべてもうやめてくださいと頼まれ、気がつくと朝だった。
 ベッドは誰が見てもわかるほどすさまじい有様になっており、血までついていた。これは破瓜の血だと姉に教わらなければ、アリョーシャは動揺のあまり倒れていたかもしれない。
 ともかく起きた時には一人で、家庭教師の姿は消えていたので、あの後は会っていなかった。
「これでそなたも一人前じゃな」
「……姉上、ソフィーヤを脅したな?」
 朝一番で弟の部屋へやってきてご満悦のエレーナに、アリョーシャは気まずいいどころではなく、勢い不機嫌になった。
「なんじゃ、脅しだと? 聞こえが悪い、そのようなことをせんでも、余の人望をもってすれば……」
「脅されなければソフィーヤが来るはずないじゃないか」
「少し現実を説いて聞かせただけじゃ」
 エレーナはいかにも不本意そうだった。
「実際そうじゃろう、余はソフィーヤの雇い主ぞ。こんな時のために雇っておるのじゃ。しっかりやってもらわんとな」
「それ聞いたら、ソフィーヤもきっと泣くよ」
 アリョーシャはベッドからシーツをひっぺがしながら、頭痛を感じた。本来メイドがやる仕事だが、恥ずかしくて他人任せにしたくなかったし、なにより姉が見ている前で放置しておくのも気が引けたからである。とはいえ頭痛の原因は、王子にもかかわらずそんな雑事をこなしていることではない。
「しかし不機嫌じゃな。思ったよりよくはなかったか?」
「姉上、この件については話す気はないからな。僕は……」
 そこで突然、今日もソフィーヤの授業があるのを思い出した。
「あ、姉上! 大変だ、このあとどうソフィーヤに接したらいい!?」
「はぁ? なんじゃ、そんなもの、もうそなたの女じゃぞ。挨拶代わりに尻でも撫でてやれ」
「そ、そんな恐ろしいこと、できるわけがないよ」
 真っ青になっている弟に一瞥くれると、エレーナはため息をついた。
「まだ足りんか。堂々とした態度を身につけられるまで、ソフィーヤの教育が必要なんではないか? また今晩も来させたほうが……」
 アリョーシャは眩暈を覚えた。この先どうしたらいいのか、彼にはますますわからなくなりつつあった。



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